THE INTERVIEW What is the VTuber Business?
カバー株式会社
取締役
植田 修平(うえだ しゅうへい)氏
カバー株式会社
取締役
植田 修平(うえだ しゅうへい)氏
近年、急速に成長を続けるVTuberビジネス。タレントでありながらキャラクターIPの側面を持ち、そのビジネスのカテゴリーは配信、ライブ、音楽、ゲーム、MD、ライセンスと幅広い。またそのビジネスは国内に留まらず、海外にも広がり、各国にもローカルなVTuberが生まれている状況だ。そんな日本発祥のVTuberビジネスを牽引している1社がカバー(株)。2024年に米国法人を設立し、グローバルビジネスにも注力している。今回のTHE INTERVIEWでは、同社取締役植田修平氏に、VTuberビジネスの基本的な考え方や、グローバル展開の現状、そしてVTuberビジネスの目指すべき将来像などについて聞いた。
クリエイターエコノミーのなかで成長
売上の半分近くがMD
――(編集部)植田さんは、日本オンラインゲーム協会の代表理事でもあり、これまでオンラインゲーム事業に従事されてきました。そんななかで、オンラインゲームとVTuberビジネスとの共通点や相違点があれば教えてください。
植田 そうですね。私自身オンラインゲームの会社を始めたのが2001年からで、現場も見ながら経営していたのは2016年までなので、15年くらいオンラインゲームに関わってきました。
オンラインゲームとVTuberビジネスは、ユーザーコミュニティ、ファンコミュニティの形成の仕方や考え方が共通しています。オンラインゲームは仕組みで課金させたり、プレイサイクルを長くさせる方法を考えたりしますが、やはり根本にあるのはユーザーコミュニティをどう形成させていくかです。特にオンラインゲームでは、ゲームのなかでどうやってユーザーを交流させて、楽しませて、競わせて、みたいなことを行ってきました。
私が最初に仕掛けたキャラクターもののゴルフゲームでは、ユーザーコミュニティとキャラクターをどう広げていくかを考え、二次創作のサークルを活かしたり、ゲーム大会を実施してコミュニティを作り、一人一人のファンが拡散できるような状況を作りました。VTuberの場合も同様で、特に当社の場合は、二次創作ガイドラインをきちんと作って、クリエイターコミュニティの拡散力を活かしてファンコミュニティを形成するということをやっています。その点ではすごく似ていると思いますね。
―― 二次創作のガイドラインは詳細に設定されているのですか?
植田 主に、切り抜き動画やショート動画といった長い配信の見どころを切り取った動画、イラストのほか、楽曲利用に関することや自作ゲームなどを実際に公開するときのガイドラインを設定しています。例えば、コミケのなかでも、VTuberに関する作品が集まる日があるのですが、当社の二次創作系の作品が非常に多く出展されています。そういった活動をしてくださっているファンの方々が、応援団としていろいろなところで宣伝してくださっています。
―― そうしたファンはクリエイターであり、そのクリエイターにもファンが付いていますからね。
植田 そうなんです。いきなり当社の所属タレントのライブ配信を見て好きになるというよりも、いろいろなところでクリエイターさんが作ったショート動画や切り抜き動画を目にして、そこから興味を持ち始めて、実際にタレントのライブ配信を何回か見ていくうちにファンになる、という流れが多いようです。そういう意味では、当社はクリエイターエコノミーのなかで成長させていただいていると感じています。
―― 一方で、相違点についてはどのように感じていますか?
植田 ビジネスという範囲でいうと、全然違いますね。特にVTuberの領域は、ビジネスサイズも含めてですが、カテゴリーの広さが違う。われわれのベースになっているのは配信なわけですが、日々、タレントのキャラクター性や個性などを理解していただけるようにライブ配信を行い、ファンになってもらうというのが最初です。その後、ファンの熱量をどうやってビジネスとして捉えていくかというと、例えば、昨日(12月16日)も当社に所属するVTuberグループ「ReGLOSS(リグロス)」のファーストライブがあったのですが、そういったライブコンサートを開くことによってファンの熱量を歌に昇華させていく。キャラクターグッズもまさにそうですね。
―― メジャーになっていくと、さらにビジネスカテゴリーは広がりますよね?
植田 タレントパワーがどんどん強くなってくると、当然ながら営業案件の引き合いも増え、ライセンスビジネスにも広がっていきます。例えば、フィギュアやコンビニくじをはじめ、いろいろなキャンペーンにも起用されるので、ビジネスのカテゴリーも広がります。
去年から当社のタレントを起用したトレーディングカードゲーム事業を始めたのですが、大会を開くと、数千人のプレイヤーが集まり、みんなで対戦をするんです。そういった光景もオンラインゲームでは見られない。
実際、当社の売上構成では、約半分近くがマーチャンダイジング(MD)です。そういう意味では、もちろん内部で商品企画も行いますし、いわゆる物流等々も管理して商流も作っています。そうしたいろいろな商流があるところがVTuber事業の一番面白いところですね。
―― キャラクタービジネスの一面もありますが、それをも包含するビジネスがVTuberビジネスということですね。
植田 VTuberはタレントですからね。もちろんキャラクターIPと見られたりもしますが、VTuber本人の意思があります。
―― そういう意味では、キャラクターと違う難しさもありますね。
植田 ほとんどのタレントがセルフプロデュースを中心に活動しているので、われわれもタレントの意向を尊重して、タレントファーストでプロジェクトを組み立てています。従って、画一的にこのVTuberはこういうキャラクターなので使ってください、みたいなことはやりません。そういう意味では、キャラクタービジネスでもありますが、タレントビジネスでもあるわけです。
YouTubeライブ配信(3D)
VTuberはゲーム実況や歌、雑談やコラボ配信などバラエティ豊かなライブ配信を日々行う
オンラインライブや企画配信などは、クオリティの高い3Dキャラクターで配信することも
VTuberはゲーム実況や歌、雑談やコラボ配信などバラエティ豊かなライブ配信を日々行う
オンラインライブや企画配信などは、クオリティの高い3Dキャラクターで配信することも
2025年開催の「hololive 6th fes. Color Rise Harmony」
年に一度開催され、タレントのイベントやライブコンサートには日本各地から多くのファンが集う
年に一度開催され、タレントのイベントやライブコンサートには日本各地から多くのファンが集う
ファンの熱量をすべて連鎖させて
ビジネスとして展開していく
―― そうしたビジネスの広がりに惹かれて取締役に就任されたのですか?
植田 そうですね。それも理由の1つですが、やはりVTuberビジネスは世界に向けて発信できることが大きい。世界中にファンプールがたくさんあるというのが、この歳になってもう1回チャレンジしたいと思った理由です。
確信できるのは、今後10年間は日本のコンテンツが世界中を席巻するということです。過去の経験や、今までの流れを見ていても、それは確信できる。そんななかでチャレンジのし甲斐があると思いました。もちろんVTuberというカルチャーをどこまで世界的に広げられるかは、本当にわれわれの戦略と実行次第ですが。
―― 日本のコンテンツのなかでもアニメは本当にグローバルで人気です。
植田 Netflixの日本アニメの視聴率を見ても、世界中に広がっていることが分かります。そんななかでVTuberという存在も、より身近になる環境が出来てきている。昔から日本のアニメ人気はありましたが、声優ブームがあったり、キャラクター一人一人が人気になるようなカルチャーがあったり、そうした変遷を経て、現在のアニメのカルチャーが出来上がり、それらが根底にあって、VTuberも人気になってきたのだと思います。
言い換えれば、VTuberだけでは世界のマーケットは獲得できない。アニメやゲームなど、日本のコンテンツが世界中で身近になる環境が整った段階だからこそVTuberもマーケットを獲得できる。特にわれわれはアニメルックのVTuberが多く所属している会社ですので、そこに可能性を感じてチャレンジしているところです。
―― 広い意味でVTuberもコンテンツビジネスだと思うのですが、コンテンツビジネスにおけるVTuberとはどのような位置づけだと考えていますか?
植田 おそらくいろいろな見方があるとは思うのですが、コンテンツとは共存関係にあると思っています。というのは、当社の所属タレントをはじめVTuberは、キャラクターでもあるのですが、配信者でもあるのでインフルエンサーなわけです。例えば、ゲームや歌、カラオケなど、いろいろなコンテンツを使って日々配信をするなかで、それぞれの個性を引き出すこともできますし、逆に言うと、その個性があるからこそ配信しているゲームなどが人気になることもあります。そういう意味では、お互いに共存関係にあるわけです。
―― 確かにコンテンツ視点で見てしまいがちですが、共存関係というのは納得できます。
植田 逆に言うと、いろいろなコンテンツを展開するうえで、VTuberという存在が不可避になる。宣伝やPRをする際に、必ずVTuberが関わり、商品の良さ、サービスの良さを伝えていくという、そういう世の中になってほしいと思っています。
実際に歌えますし、踊りも出来ますし、ゲームもできますし、雑談もすごく面白いので、そういう意味ではやはり単純なキャラクターとはちょっと違うわけです。
―― 先ほどMDが売上の半分近くを占めているというお話がありましたが、今後のMD展開の方向性についてはどのように考えていますか?
植田 そうですね。あくまでもわれわれはタレントを基調にしているので、他のキャラクタービジネスとは違う展開をしていかなければいけない。というのは、ファンは配信を見てファンになって、そのファンの熱量をビジネスに変えていく手段としてMDがあるわけです。例えば、ライブコンサートでは法被を着て、ペンライトを持って、それらを使ってライブを盛り上げてタレントを応援するみたいな、すべてが連鎖していきます。
トレーディングカードも同じです。もちろんゲームが面白いから大会に行くわけですが、プレイヤーの多くは、自分の推しのキャラクターグッズを持って、対戦する時に「誰推しですか?」みたいな感じで会話するんです。ファンの熱量をすべて連鎖させてビジネスとして展開していく、そういうストーリーを作っていかないといけない。MDビジネスは単純に大量生産して大量消費するというものではないので、ファンの熱量をどこに投下させていくかをきちんと設計してあげることが肝になると思っていますね。
―― ホロライブの公式ショップを展開されていますよね。
植田 そうですね。公式ショップを東京駅と大阪の梅田に展開しています。すごくタッチポイントとして良いんです。例えば、地方のファンの方が東京にイベントやライブコンサートを見に来る時に、ついでに公式ショップに寄ってグッズを買うとか、毎年3月には幕張でライブと一般展示を合わせた「hololive SUPER EXPO & fes.」という一大イベントを開催しているのですが、その時は海外からもお客さんがいらっしゃいますので、幕張に行く前に東京駅のオフィシャルショップに行って、イベントで身に着けるものも含めて欲しい商品を買って会場に向かう。そういった良い循環が生まれています。
2025年12月16日開催のReGLOSS(リグロス)1st Live
有明アリーナのステージで輝きを放つReGLOSSのパフォーマンスに、会場を埋め尽くす無数のペンライトが鮮やかに揺れていた
有明アリーナのステージで輝きを放つReGLOSSのパフォーマンスに、会場を埋め尽くす無数のペンライトが鮮やかに揺れていた
「ホロライブプロダクション」公式グッズブランド「hololive friends with u」
課題は物流の問題と関税
適切な時期に展開することが重要
―― 貴社では2024年にアメリカに法人を作られグローバル戦略を進めていると思うのですが、現在はどのような段階でしょうか?
植田 グローバルで見たカルチャーで言うと、まだまだ入り口だと思います。日本においてはここ数年で大きく伸びてきましたが、例えば北米や東アジアを見ていると、これからさらに伸びていくと思っています。
というのは、それぞれの国のローカルなVTuberがここ1、2年で生まれつつあり、アメリカでも個人で活動をするVTuberが増えてきています。もちろん広がっては縮小してを繰り返すとは思うのですが、やはりプレイヤーの数が増えてきているということは世界的にも認知されつつあるということです。おそらく今後はいろいろなVTuberが出てくると思いますね。
―― 日本のVTuberとは違いますか?
植田 例えば、韓国では、「PLAVE(プレイブ)」というK-POP寄りの男性バーチャルユニットがいるのですが、歌とダンスを基調としていて、非常に人気を得ています。当社のやり方とは全然違うのですが、そういったバーチャルタレントも生まれていますし、中東にも登録者数が100万人を超えているようなVTuberがいます。まだまだ広がっていくと思いますね。
―― VTuberが世界戦略をしていくうえでの現在の課題をどのように感じていますか?
植田 特に今年ちょっと課題だと思ったのは、物流の問題や、一時のトランプ関税ですね。ゲームビジネスをしていた時はデジタルだったので、関税や、製造して物流で輸送するということが全くなかったので、そこが一番違うところです。フィジカルなものを扱うときに現地で生産したいのですが、まだそこまでのノウハウと規模がない。そもそもアメリカで作ろうと思っても、製造先はアジアですからね。それについてはこれからの課題として突きつけられました。もちろん越境で輸送するということもあるのですが、やはり料金や輸送の時間もあり、なかなかタイムリーに届けられないですからね。
―― 貴社の戦略的には北米から広げていくみたいなイメージですか?
植田 そうですね。今注力しているのは、「ホロライブEnglish」という英語圏向けに活動するグループとインドネシアを拠点に活動する「ホロライブインドネシア」というグループです。ファンベースでいうと、やはり北米やインドネシアにはたくさんファンがいらっしゃいます。
あとは、言語展開はしていないのですが、東アジアは、これからすごく伸びる市場だと思っています。実際に当社の商品も売れていますし、ライブコンサートをはじめ、いろいろなイベントを実施すると、かなりの集客で、これからの成長エンジンになると思っています。
―― インドネシアですか?
植田 はい。今年インドネシアで5周年記念のオフラインイベントを実施したのですが、数分でチケットが完売してしまいました。それくらい人気があります。北米では以前から定期的にライブやミーティングを開催しており、ファンとタレントの接点をどんどん増やしている状況ですね。
―― 海外でVTuberビジネスを大きくしていくための課題は?
植田 まず日本のサブカルチャーをどれだけ浸透させられるかという前提はあるのですが、ビジネスの環境についても、国や地域によって違いがあります。先ほどもお伝えしたように、われわれのビジネスは、配信、ライブ、音楽、MD、ゲーム、プロモーション、ライセンスなどいろいろありますが、それをマネタイズするための土壌がその地域にないと厳しいわけです。
広告媒体が少なかったり、グッズを買う習慣が浸透していない国や地域もあるため、その土壌の性質を見極めて、適切な時期に展開をしていかないといけない。それはすごく難しいことだと思いました。
―― 逆に各国でローカルなVTuberが生まれているなかで、ビジネスの仕組みをしっかり彼らが覚えていくと、各国ごとにローカルなVTuberビジネスが生まれていくような可能性はないのでしょうか。
植田 それはあると思いますね。実際に言語の壁はありますからね。いくらAIが入って翻訳をするとはいっても、やはり生身の声できちんと伝えられないと面白さがわからない。
ただ、当社の所属タレントの特にアジア地域のファンは、日本語を覚えて配信を聞いている人も結構多いんです。現地の言語で話してるわけではなくても、それでも言語の壁を超えてファンになってくれている。こうした1つのハードルを超えてくれるファンはすごく大事だと思います。
ホロライブプロダクションのタレントたちをモチーフにした
トレーディングカードゲーム「hololive OFFICIAL CARD GAME」
トレーディングカードゲーム「hololive OFFICIAL CARD GAME」
東京駅『東京キャラクターストリート』のホロライブプロダクション公式ショップ
「hololive production official shop in Tokyo Station」(2024年12月28日撮影)
「hololive production official shop in Tokyo Station」(2024年12月28日撮影)
ホロライブプロダクション公式グッズを販売する公式ショップ
イベントやライブコンサート開催時に立ち寄り、グッズを購入するファンも。
イベントやライブコンサート開催時に立ち寄り、グッズを購入するファンも。
VTuberをカルチャーにして
社会を変えていきたい
―― 最後にVTuberビジネスの将来像について教えてください。
植田 当社のミッションにもあるのですが、VTuberをカルチャーにしたい。何年後になるかわからないですが、VTuberがいる存在が当たり前の世の中に早くしたいと思っています。
―― カルチャーというのは、いわゆるVTuberが当たり前に存在していることとイコールですか?
植田 そうですね。今はまだ新しいエンタメという見え方だと思います。よく当社の社長が言うのですが、生身の人間では容姿も体型も含めて、ある程度生まれ持ってきたままのものを表現しなければいけないわけですが、自分が後天的に身につけたものをうまく活かした表現方法としてVTuberがあると思うんです。だからわれわれが世の中で見つけられていない才能をもっと見つけ出してあげて、VTuberとして個人の才能を昇華していただく。そういったことがどんどんできるような世の中になれば、カルチャーになるのかなと思います。
―― そういう社会は素晴らしいですね。
植田 例えば、ボカロ(ボーカロイド)なども最初はあくまでもツールだったと思います。そのボカロを通じて、楽器は弾けないけれど作曲を学んで挑戦した方々が出てきて、もう20年以上経つ今では、トップスターになってる方が数多くいらっしゃいます。そういう意味では、VTuberを通じて社会を変えていくとか、トップスターになるとか、そういう方がどんどん生まれてくると、おそらく世の中が変わっていくと思うんです。
―― 確かにVTuberは社会を変える可能性を秘めていますね。そういう意味では、本当にカルチャーになってほしいと思います。本日は、お忙しいなか、ありがとうございました。
(収録日・2025年12月17日 カバー株式会社 会議室)
植田 修平(うえだ しゅうへい)
新卒でイマジニア株式会社入社。2001年に株式会社ゲームポット設立し、代表取締役に就任。FreeToPlayの先駆者としてオンラインゲーム黎明期を牽引し、IPOを果たす。その後、韓国大手ライブ配信AfreecaTV日本法人の代表をはじめ、数社の代表取締役を歴任。2023年に社外取締役、2025年より常勤取締役に就任。一般社団法人日本オンラインゲーム協会共同代表理事。
2026/04/21
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