News
会員
サービス
とは?

THE INTERVIEW Three arrows

株式会社サンリオ
代表取締役社長
辻 朋邦(つじ・ともくに)氏

2020年にサンリオ代表取締役社長に就任した辻 朋邦氏。同氏が中心となって2021年に策定した「中期経営計画(中計)」の「組織風土改革、構造改革の完遂、再成長の種まき」が奏功し、業績は毎年好調に推移している。そして、昨年発表された新たな「中計」ではボラティリティからの脱却を図るために“3本の矢”で安定・永続成長を目指すとしていたが、2025年3月期の業績予想では、連結営業利益が従来予想の410億円から512億円へと上方修正され、「中計」の目標値を初年度で大幅にクリアした。今回のTHE INTERVIEWでは、国内外含めて好調に推移するサンリオの現状に対する評価と今後の方向性について、辻氏に聞いた。

辻 朋邦(つじ ともくに)
1988年生まれ。慶応義塾大学卒業後、事業会社勤務を経て2014年1月にサンリオ入社。入社後、経理部に在籍、その後、企画営業本部でセールスプロモーションの営業を行う。2016年6月に取締役企画営業本部副本部長となり企画営業本部全体を統括。2017年6月に専務取締役、2020年より代表取締役社長に就任。2025年より一般社団法人キャラクターブランド・ライセンス協会理事長にも就任した。

 

戦略がある経営、そして組織の変革が
2024年の好調要因

 
――(編集部)2024年も貴社は大変好調だったと思います。その好調要因について、どのように評価されていますか?
 いろいろな要因があるとは思いますが、2020年に社長に就任する少し前あたりからここ3~4年のなかで、社内の組織も含めて、さまざまな改革を行ってきました。当時改革を始める時、何が課題だったかというと、大きな意味で戦略不足ということがありました。そこで、社長就任前ですが、例えばマーケティングの組織を立ち上げて、これからのキャラクター戦略を考え、また社長に就任してからは外部人材を入れて、いわゆる経営戦略を考えるということを主にやってきました。 
 もう1つ大きかったのは、前中期経営計画の第一の柱である組織風土改革です。創業から60年間やってきて凝り固まってしまった部分があり、チャレンジがしづらかったり、短期目線になってしまったり、いわゆる全社連携ができていませんでした。改革を進めるなかで、そうしたさまざまな課題を解決してきました。
 
――改革が奏功して好業績につながったわけですね。
 そうですね。最近の好業績の大きな要因は、やはりキャラクターのブランド力が大きく上がってきたことで、経営基盤がしっかりしたことから、いまの業績、株価というものがあります。戦略がある経営、そして組織の変革がなかったら、いわゆるコロナ後の流れにも乗ることはできなかったと思います。
 
――「ハローキティ」だけでなく、「シナモロール」や「クロミ」など、さまざまなキャラクターが好調のように見えます。
 「ハローキティ」の売上は下げずに、キャラクター構成比を見直しました。例えば「クロミ」などを打ち出すことによって、キャラクター全体に焦点が当たり、サンリオへの注目度も上がっていったわけです。
われわれはソーシャルメディアのマーケティング、そしていわゆる店頭、ライセンスビジネスがありますので、そういう意味ではデジタルとリアルのタッチポイントという、その両局面によって最大値を出すことができ、それがここ数年のサンリオのブランド力の向上につながっていると思います。昨年で言えば「ハローキティ」50周年も、さらにそのサイクルを加速化させました。
 
――長年に渡って貴社には注目してきましたが、ここ3~4年のなかで、一気に経営層含め変わりましたね。
 社長になったタイミングで、いろいろな人を外部採用しました。その際に社員にも伝えたのですが、われわれはチームで優勝を狙っていかなければならない。私ができることは、リーダータイプの前の社長(現在の名誉会長)とは違って、皆に活躍の場を与える、いわゆる野球チームで言えば監督のような立ち位置としてやっていきたいと。そのためには、全員が四番バッターでも優勝はできないし、ストレートがものすごく速いけど、ストレートしか投げられないピッチャーだけでも優勝はできない。やはりいろいろな方々がいて、そのバランスをとってチーム力を上げていくことが必要だと伝えてきました。
 
――それもスピード感をもって実施されました。
 一気に改革をしないと意味がないと思っていました。当時、私の失敗でもあるのですが、いろいろ改革をする時に、1人しか外部採用しないで進めていたのですが、やはりやりきれないんです。改革で1番大事なことは実行することなので、役員を含めて一気に外部から採用したわけです。
 
――一気にやらないと意味がないというのはすごくよく分かりますが、それは一方でリスクも伴い、経営判断として勇気がいることですよね。
 私の場合は、その改革をしないといけないという危機感のほうが強かったですね。自分が入社する前のサンリオのイメージは、いわゆる7年連続減収減益が続いてしまっていたわけです。200億円以上あった利益が7年で赤字にまで転落したということは、われわれの企業理念である「One World, Connecting Smiles.」の笑顔の数も減ってしまったということです。いくら「みんななかよく」という思想を持ちながらやってても、実際作れてる笑顔の数が減っているのが明確だったので、やはり改革をしなければならないと。改革にも確かにリスクはありますが、このまま何もやらないほうがもっとリスクがあると思いました。
 
――まさに改革の成果が着実に実績につながっているということが分かりました。以前の戦略不足から、いまの戦略というのは、具体的には何が変わったのですか?
 1番は、やはりゴールを見据えて戦略を立てられるようになったということです。それぞれのキャラクターを、どういうキャラクターにして、どういうファン層を育て、キャラクターのポートフォリオをどう作り上げていくことが、ファンの笑顔を最大化することにつながるのか、いわゆるKGIやKPIという目標値です。大きな意味で、経営としての目標値がしっかりわれわれのなかにあって、それを追い求めていけるということが、いまと以前では明らかに違います。
 
© 2025 SANRIO CO., LTD.  著作 株式会社サンリオ
© 2025 SANRIO CO., LTD. 著作 株式会社サンリオ

Z世代をターゲットに展開した
「ハローキティ」50周年

 
――昨年は「ハローキティ」50周年でしたが、何をゴールにされていたのですか?
 「ハローキティ」をはじめとする当社のキャラクターは、ファン層が分かれています。例えば「シナモロール」や「クロミ」は、10代後半~20代前半のファンが多く、もう少し上の層は「マイメロディ」と、いろいろな層に分かれているのですが、「ハローキティ」50周年に関しては、コアターゲットをZ世代にしました。「ハローキティ」はZ世代からの認知度は高いのですが、好意度や購買度はあまり高くはなかった。歴史のあるキャラクターという印象が強いのか、かわいいが、センスがいいというのが足りないピースでした。この先50年に向けたブランドづくりにつながっていくのではないかと考えました。
 
――Z世代ターゲットで展開されたのですね。
 一方で、Z世代のソーシャルメディア上での拡散度はすごいものがあります。ソーシャルメディア上で波及していくと、もともと「ハローキティ」が好きで購買いただいているファンも、Z世代のファンも含めて、全世代のファンに認められているキャラクターなのだと再認識してもらえる。それをゴールにしていたので、最初は、例えばデジタル上での施策や、Z世代がセンスのいいと思っている方々とパートナーシップを結んで展開しました。われわれにとって周年は、その場での売上を作るものではなく、その先をどう見据えていくかという位置づけです。
 
――ライセンスビジネスも同様の位置づけですか?
 キャラクタービジネスは、掛け算だと思っています。1つの施策がうまくいって、もう1つの施策がうまくいく、これは足し算ですが、例えば「ハローキティ」の購買が高い層だけのためにイベントを展開したら、その売上しかありませんが、Z世代向けにいろいろな企画を展開すると話題になる。話題性が高まっていくと、今度はライセンシーの皆さんに使っていただく機会が増えていく。ライセンスビジネスは露出を多くしていただけるビジネスなので、それがまたプロモーションにつながり、Z世代をはじめ、いろいろな層に広がっていく。いわゆるそういったサイクルが作り上げられたということが、とても大きな成果だったのではないかと思っています。
 
――東京国立博物館で開催した「Hello Kitty展」も大成功と言えるのではないかと思います。
 そうですね。正直、想像以上の来場者数でした。やはりいまの話題性もあって、われわれが想定していた以上にライセンシーの皆さんにもたくさん使っていただきましたし、例えばマクドナルドの企画などは、ソーシャルメディア上でよく拡散されました。そうした注目度の集合体が「Hello Kitty展」において、多くの人が並んでくださったという結果につながったと思います。
 

関連記事