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利益ベースで言えば
8割強は海外から

 
――一方で、業績好調の要因としてグローバル市場の貢献も大きかったのではないかと思います。
 間違いなくグローバルは大きいですね。われわれの業績のほとんどは海外市場からの利益になっていますし、ここ数年、北米市場の売上がかなり拡大しています。やはりエンターテインメント大国と言われる北米市場はいまもそうですし、今後も最重要地域の1つと考えています。国内は店舗運営に加えて、テーマパークもあるので売上でみると日本が大きく見えるのですが、利益ベースで言えば8割は海外からです。
 
――それも改革の成果ですか?
 そうですね、全世界どこでも取り組んでいることはあまり変わらないです。われわれが行うプロモーション、ライセンスで行われるプロモーション、そして最近影響力が大きいのは、やはりユーザーが作ってくださるプロモーションです。
例えばソーシャルメディア上で「クロミ」の素材を出すと、それが人気になることで、ライセンシーの皆さんに使っていただくことができ、「クロミ」のブランド力が上がっていく。そうすると今度は「クロミ」の商品を買ったお客様や「クロミ」の何かを見たお客様にそれをさらに拡散していただける。それがまた増えていくと、例えばライセンスのグローバルディールなどが決まる。そのサイクルが全世界で回っているような状況です。
 
――グローバル市場は、一時良かった時期もありましたが、その後、厳しい時期が続いていました。
 そうですね。10年前も売上は良かったのですが、その時は「ハローキティ」の一本足でした。いまは「クロミ」や「シナモロール」、「ポムポムプリン」といった、さまざまなキャラクターが加わることによって、「ハローキティ」自身のブランディングにもなるし、「ハローキティ」は他のキャラクターのブランディングにもつながっています。またいずれかのキャラクターが多少落ちてきたタイミングでも他のキャラクターがいるので下支えをすることができる。さらにキャラクターのブランディングとして、例えばアニメをはじめ、さまざまなコンテンツを定期的に出して、価値を蓄積していくことができているため、10年前とは全く違う状況に変わっています。
 
――海外については、日本でコントロールしている状況ですか?
 そうです。ただ、今後は現地の地域性もあるので、いわゆるローカルでマーケティングを進めないといけないことが増えてくると思います。当然、地域性を考えてデザインするということはすでに始めていますが、そういったアセットをローカルでうまく使うというのは、われわれが東京からコントロールできにくいですし、現地の人にやってもらったほうがいいこともたくさんあるので、今後は権限委譲も、しっかりやっていきたいと思っています。
 
© 2025 SANRIO CO., LTD.  著作 株式会社サンリオ
© 2025 SANRIO CO., LTD. 著作 株式会社サンリオ

3本の矢に投資を行い
ボラティリティから脱却

 
――グローバル戦略の話にも関わると思いますが、新中期経営計画では、成長と投資という段階に入ります。2027年3月期には営業利益を400億円以上、すでに500億円以上と上方修正しているようですね。
 そうですね。新中期経営計画では、ボラティリティ(業績の大きな変動)からの脱却と言っているのですが、いわゆるトレンドに乗って上がっていくだけではダメで、だからこそ投資を行って、未来を見据えて、そのプロセスの戦略を考えブランド向上につなげていく。当たり前の話をしているのですが、前任の社長はアイデアマンでしたし、私はそうではないので、誰もがサンリオを経営しても、しっかりとやっていけるような体制にしていくことが大事だと思っています。
 
――新中期経営計画のポイントに挙げているのが3本の矢ですね。
 はい、そうです。1本目の矢としているのはマーケティング・営業投資を北米英語圏に集中し、北米でエバーグリーンなIPへ育てるということです。これからわれわれがさらなる成長をしていくなかで北米市場は、先ほども申し上げたとおり大事な市場であり、これまで当社のキャラクターライセンスビジネスのシェアは2%でしたが、昨年は3%に増えました。この3%という数字をどこまで伸ばしていけるかということが、今後のビジネス拡大の指標になっていくと思います。
 
――いかにエバーグリーン化するかがポイントですね。
 「ハローキティ」はマス流通との取引も増え、エバーグリーン化しつつありますが、今後北米市場で成長していくためには、やはり「シナモロール」や「クロミ」をはじめ、他のキャラクターも拡大させていかなければならない。キャラクターのポートフォリオを全世界的にみると、「ハローキティ」の売上シェアは30%ぐらいなのですが、北米だけでみると、まだ60%強のシェアなのでそのバランスを調整し、他のキャラクターの売上を上げていき、北米全体のシェア率を上げていくことが、われわれにとっては大事だと考えています。
 
――それに付随して2本目の矢である「グローバル成長基盤の構築」があるわけですね。
 ここ数年、これだけの成長をしているので、若干成長痛みたいなところもあります。例えば、人材などもそうです。経営層もそうだし、デザイナーもそうだし、プロデューサーもそうだし、さまざまな人材が必要で、そこをしっかり固め、いわゆる北米でのシェア率を上げていく。もっと社内基盤を固めることによって、新たなチャレンジができます。それによって、3本目の矢であるいわゆる「IPポートフォリオ拡充とマネタイズ多層化」をしっかり行っていこうという計画です。
 
――北米市場は本当に重要だと思うのですが、そのなかで成長を加速させるためのポイントは何でしょうか?
 やはりキャラクターのブランド価値をどう高めていくかに尽きると思います。そのためには、ソーシャルメディアでのコンテンツ展開と同時に、どういった露出をわれわれはしていくべきなのか戦略を考えることが大事です。当然、米国なので、いろいろな流通があります。ウォルマートやターゲットのようなマスに強い流通もあれば、スペシャリティストアと呼ばれるところもある。そのような場で価値を創造し蓄積するために、どのようなライセンシーと組んでいくのかということはとても大事だと思います。
 
――現在はスペシャリティストアが中心ですか?
 スペシャリティストアも強いですが、昨年くらいからマス流通にも流れてはいます。ただわれわれが気をつけないといけないのはブランド毀損の問題です。10年前は「ハローキティ」一本足で、一気にライセンスを拡大していくために、いわゆるウォルマートなどにも大量に商品を並べました。いわゆる露出という意味で増やしていって、露出が増えすぎたことでブランド毀損につながり、棚を取られてしまいました。いまは認知・好意度、購買度など、いろいろな指標を見ながら、しっかり「ハローキティ」のエンゲージメントを高めていくということをしているので、10年前のようにはならないと思います。
 

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